マンションの入口のガラス扉を一生懸命拭いていたときのこと。
後ろから「こんにちは」と声をかけられて振り向くと、おじさんが立っていた。
正直、あまり身なりのいい人ではなかったため、つい、けげんな顔をすると
「あ、僕も同業者やねん」と、怪しいものじゃないですよというようなジェスチャーをし、「ガラス拭き大変やね〜」と拭けてないガラス扉の上部を見ながら、何か一言言いたげにおじさんが喋ってきた。
おじさんの顔が（ガラス扉の上は吹かなくていいの？）と言いたげだと察知した私は「上は拭けてませんけどね」と言った。
「階段の溝とか掃除してる？」とまたおじさんが聞いてきたので「はい」と答えると「溝、掃除するの大変やよなぁ」というので、そろそろおじさんにあっちにいって欲しかったため、おじさんに背を向けて「そうですね」といい、ガラスを拭きの続きをはじめるとおじさんが
「ラクそうな仕事やなぁ〜、僕のところの方が大変やわ。僕は掃除以外に、○○やろ、✕✕やろ、3時間のうちにそれもやってんねんで」とおじさんが喋ってきた。
（私も、おんなじ仕事やっとるわ！）と思いながら、しかし何か言い返して変なことされたら怖いので、愛想笑いをして、距離を広げて違うガラスを拭き始めると、追い打ちをかけるかのように
「ラクそうな仕事やわぁ。マンションの掃除、ええなぁ」と言って帰って行った。
おっさん、なんやねん！
と、ちょっとムカついたが、たしかに、気をつかわなさそうと思って私もこの仕事を選んだので、おじさんの言ってることは、間違ってはいないけど、それでも色々大変だと思うことはあるわけで…。
まぁ、とにかく変なおじさんだった。
